西武信用金庫様が「障害児から学ぶダイバーシティ研修」をご受講されました

こんにちは、華ひらくの内木美樹です。
2025年2月7日に、西武信用金庫様の入庫2年目の職員さん(約50名)が、「障害児から学ぶダイバーシティ研修」をご受講くださいました。
西武信用金庫様は、数年前から数字目標をやめ、人に地域に未来に”やさしい”信用金庫となり、お客さまから選んでいただける金融機関を目指されています。
数多く実施されている社員研修の中でもSDGsに非常に力を入れていらっしゃり、ユニバーサルマナー検定や車いす体験の研修もご受講されているほどです。
そしてこの度、「やさしい人財の育成」の一歩として、障害児と遊ぶという非日常を体験する当研修をご導入くださいました。
CONTENTS
研修の内容① 内木の講義
障害に関するクイズ
当日は9時に研修がスタートしました。
まずは髙橋理事長のあいさつから始まり、それから私(華ひらく代表)による講義が行われました。
恐らく、多くの方にとって障害は身近な話題ではないはずです。よって、講義ではまず障害に関するクイズを行いました。
障害の種類や日本の障害者の数、各障害の割合などをテレビのクイズ番組のようにチームで答えていただき、「ただ聞く」だけではなく「考える」「話し合う」「答える」などのワークを取り入れました。
障害児と遊ぶ際にやっていただきたい事3つ
会場の雰囲気がだいぶ温まったところで、カラフルモデル(障害のあるキッズモデル)や「障害児から学ぶダイバーシティ研修」の目的をご説明し、いよいよ本日のメインである障害児(研修内では「カラフル先生」呼んでいます。)の紹介です。
しかし、いきなり「障害児と遊んでください」と言われても戸惑わない人の方が圧倒的に少ないでしょう。ましてや、カラフル先生の多くは言葉による会話が難しい子たちです。言葉が通じにくい人とどのようにコミュニケーションを取るのか。その方法として、3つの「やっていただきたい事」をご提示しました。
1.観察する
2.カラフル先生流のコミュニケーション方法を見つける
3.「ちがい」を楽しむ
1の「観察する」は、カラフル先生をよく見るという事です。言葉がない人でもコミュニケーションは取れます。ただ、その方法が一般とはちがうだけなのです。そして、その人がどのようなコミュニケーションをとっているのかは、興味をもって観察することで見えてきます。ですので、「相手を知ろうとする」という意味も込めて、観察をお願いしました。
そうして観察していくことで、カラフル先生流のコミュニケーション方法を見えてきます。心を開き、目線を合わせて、表情豊かに、身振り手振りを豊富に使いながら会話をすれば、言葉がなくても意思の疎通がとれるのです。
最後は「ちがい」を楽しむです。自分目線で物事を考えると、「どうして私のやり方でやってくれないの」という負の感情が湧いてきます。しかし、「同じ人間でもこんなにも違うなんて、面白いな」のようにちがいを楽しむ(受け入れる)事ができれば、障害だけではなく、言語、国籍、年齢、性別、宗教、嗜好など、あらゆるものが違う人とでもいい関係を気づく事ができるからです。
障害児の保護者にインタビュー
「障害児から学ぶダイバーシティ研修」のメインはカラフル先生ですが、「保護者へのインタビュー」も非常に重きを置いているパートです。
一般的に、「お子さんはどんな障害をお持ちなんですか?」「障害児の子育ては何が大変ですか?」のような質問はタブーとされています。多くの方は、「訊いたら失礼」と考えています。
しかし、訊かなければ知る事はできません。理解もできません。
当研修は、障害児や保護者とふれあえる稀有な機会です。よって、保護者にたくさんの質問をして、普段は聴けないような障害者家族のありったけの生の声に耳を傾けるというワークも取り入れています。
研修の内容② 障害児(カラフル先生)とのコミュニケーション
内木の講義が終わり、いよいよカラフル先生の登場です。
当日、2年目職員の方々は私服でご参加いただきました。大勢いる知らない大人がみんな黒い服ですと、子供たちが怖がってしまうからです。
そして、会場にはビニールシートをはじめ、たくさんの彩り豊かな風船や、お金を使って遊べる駄菓子屋さんコーナーもご用意いただきました。
はじめはさすがに緊張していたカラフル先生ですが、お姉さん・お兄さんが笑顔で迎えて下さったのですぐに場の雰囲気になれる事ができました。
そしていよいよ研修スタートです。まずはグループ毎で自己紹介。職員の方々は、保護者にカラフル先生との接し方などを教えてもらいながら、笑顔でたくさんの声掛けをしてくださいました。
その後は風船バレーや駄菓子屋さんごっこ、窓に描けるクレヨン(キットパス)を使ってのお絵描きや、研修会場の上にある宿泊施設の二段ベッドで遊んだりとすっかり仲良しで、そこにはもう、「障害のある人とない人」のような壁はありませんでした。
カラフル先生の動きがあまりにも激しかったので、2年目の職員さんの中には5階に行ったり2階に戻ったりと大急ぎの方もいました。しかし、そのように心と体を一緒に動かせたので、最初に見せていた緊張や戸惑いの表情は非常に早い段階で薄れ、カラフル先生と笑い合うシーンや先生を抱っこするなど、身体的にもふれあう様子が多々見受けられました。
研修の内容③ 保護者へのインタビュー
そうしてグループ内の職員さんがカラフル先生と遊んでいる間に、残りの職員さんは保護者へのインタビューです。私の講義で発した「どうか遠慮なく質問してください」というお願いを受け取ってくださり、初対面にも関わらずこのような質問を出してくださいました。
●支援学校はどうやって通うのか
●支援学校ではどんな授業をしているのか
●車椅子で公共機関を使っている方にはお声がけはして良いものなのか
●普通学級と支援級、支援学校の基準
●障害児の親同士のコミュニティの有無
●障害児の就学や就職
●生活をしている中、辛いと思ったこと、大変なこと
●障害がわかった時期
●障害の診断がおりた時の心境
●障害児の習い事
●子どもが歩けるようになったら一緒に何処に行きたい
●今後どのように成長していくのか
●障害に気づいた時の父親の反応 等
そうこうしている内にあっという間に終了の時間になり、最後は全員で食堂に移動してランチを食べ、カラフル先生と保護者は帰路につきました。
研修を終えて
いきなり障害児と遊べてと言われても、戸惑うのが当然です。中には障害の有無に関わらず、そもそも子どもが得意ではないという方もいらっしゃった事でしょう。しかしそんな中でもまず感じたのは、ご受講くださった2年目の方々はいい意味で「男女の役割」がなかった事です。
「育児や子育ては女性の方が得意」と言われることは多いので、子どもと遊ぶような研修では女性が積極的で、男性は前をゆく女性の後を付いていく事を想像していました。しかし、いざ蓋を開けてみたら男性も同じくらい積極的で、何よりもとても楽しそうなのが印象的でした。
男性にはつまらないかもしれないという心配は、見事に杞憂でした。
また、午後の研修が始まった後に全員にアンケートを書いていただいたのですが、「障害児から学ぶダイバーシティ研修を受講し、感じた事、気づいた事は」の問いに対し、このような回答が多く見られました。
●言葉を交さなくても、目線の動きやボディランゲージで思いや考えをくみ取ることは、言葉で 会話するよりもより相手のことを考えて知ることにつながる
●障害には様々な種類や程度があり、個々に合わせた対応が必要
●障害を持っていたとしても、他の分野で評価されるべきポイントはたくさんある
●身近に感じて知ることが大切
●配慮は必要だが、全てやってあげる事がやさしさではない
●自分にとっての当たり前が相手にとっての当たり前ではない
●日本の人口の約10%は障害者というデータに驚いた
●実際に関わってみるという体験はとても大事
そして、「障害の有無に関わらず、業務でもできる事は」という質問に対しては、このような回答をされていました。
●会話をするとき、ながらで話すのではなくきちんと相手と向き合う
●「触れない」が正しい接し方ではない
●決して自分の感覚が相手に伝わると思わない
●第一印象で決め付けない
●困っている人に積極的に声をかける
●言葉だけでなく、身ぶり手ぶりや物を使うなどのコミュニケーション
●ゆっくりと目線を合わせ、なるべくわかりやすい単語で伝える
※受講者様のアンケート結果は、別の記事で改めてご紹介します。
弊社の研修は、「これを学んでください」というものはありません。何に気づき、何を得るかは受講された方々次第です。しかし、このようにこちらがお膳立てをしない事でより創造性が広がり、今までは目に見える物しか見えなかったのが、目に見えないものを考える、想像する力がついたように思えました。
これがいわゆる、「やさしさ」なのですね。
2年目職員の方々の、緊張しながらも素直に、心を開いてカラフル先生や保護者と接する姿は、「みんなちがって、みんないい」を具現化されているようでした。年齢、性別、障害の有無、得意不得意がちがう中でも、互いに興味を持ち知ろうとする気持ちこそがインクルージョンです。それを見事に見せていただきました。
ご受講くださった皆様、そして、当研修をご導入くださった西武信用金庫の各部署の皆様、本当にありがとうございました。

執筆者紹介内木美樹Miki Uchiki
株式会社華ひらく/非言語コミュニケーション専門家
Truckee Meadows Community College 卒。卒業後はアメリカ・ネバダ州のカジノホテル内の飲食店に就職。非言語コミュニケーションを巧みに使用した接客により、”No. 1 server” とマネージャーから称される。帰国後、2010年に株式会社華ひらくを設立。飲食店インバウンド専門家として、「インバウンド接客 ~英語が話せなくても海外のお客様に接客する方法~」などの非言語コミュニケーションに重きを置いたセミナーを全国で開催。2021年からカラフルモデル(障害のあるキッズモデル)事業を開始。撮影中、障害児との触れ合いの中で大人のコミュニケーション力が飛躍的に向上した事を何度も目の当たりにし、2024年に「障害児から学ぶ非言語コミュニケーション」を企業研修としてリリース。
